研究活動
日時 2023年1月7日(土)、8日(日)
開催形式 対面/オンライン(Zoom)(★いずれも要申し込み)
■対面/会場:京都大学 吉田南キャンパス 吉田南総合館 東南棟1階 101演習室
地図:http://www.h.kyoto-u.ac.jp/access/ (吉田南キャンパスへのアクセス)
地図:https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/access/campus/yoshida/map6r-ys (キャンパスマップ)
※吉田南総合館 東南棟は、No.86の建物です。
■オンライン:申し込まれた方に、追ってZoomリンクをお送りします。
参加申し込み
以下の申し込みフォームよりお申込みください(★12月27日申込締切)
https://forms.gle/SuNEGzGr4f1PCEdn8
※資料準備の都合上、対面参加の場合もお申込みください。
プログラム
■1月7日(土)13:00-18:15
●参加者自己紹介・近況報告 13:00-13:30
1. ミニシンポ 13:30‐16:30
愛国歌と抵抗歌:マフサー・アミーニー事件をきっかけに
2022年9月16日に22歳のクルド人女性マフサー・アミーニーさんの死に対して故郷のクルディスタン州サッゲズで始まった抗議運動は、瞬く間にイラン全国に広がっていった。ヒジャーブの着用義務に対する反発だけでなく、「女性zan、命zendegī(またはjān)、自由āzādī」のスローガンの下、女性だけでなくイラン国民全体の自由への希求が、強圧的なレジームと最高指導者の否定へと繋がって、「革命」運動とも呼ばれる事態となっている。
一連の運動の盛り上がりに大きく寄与したのが、SNS上で果てしなく共有されていく抵抗歌や愛国歌である。シェルヴィーン・ハージープールの「バラーイェ(~のための)」はとくに有名になったが、他にも数え切れない歌のビデオクリップが作られ、歌い継がれる中で多くのヴァリアントを生んでいる。過去の愛国歌や抵抗歌も使われているし、著名な近現代詩人の作品が新たに曲に乗せて歌われることも少なくない。
本発表では、4人の発表者が様々な角度からこの現象についての考えを述べていく。
発表1:藤元優子(大阪大学名誉教授、イラン文学)
「イランにおける愛国歌・抵抗歌の歴史と分類」
イランの愛国歌や抵抗歌は、20世紀初頭の立憲運動期に生まれた。そこから百年余りのこの種の歌の歴史を概観し、大まかな分類を試みて、現在の抵抗歌の特徴を考えてみたい。
発表2:中村菜穂(大阪大学、現代イラン文学)
「近代イランの抵抗詩・抵抗歌——ジャーレ、アーレフ、バハール」
近代イランの抵抗詩・抵抗歌として、女性の権利について詠ったアーラム=タージ・ガーエムマガーミー、シンガー・ソングライターのアーレフ・ガズヴィーニー、桂冠詩人バハールの作品を取り上げ、それらの現代的な意義を検討したい。
発表3:鈴木珠里(中央大学/上智大学、現代イラン文学)
「抵抗歌『バラーイェ(~のために)』の広がり―世界に流れた様々な抵抗の表現と手段」
マフサー・アミーニー事件後SNSで発表されたシェルヴィーン・ハージープール「バラーイェ(~のための)」、その歌から生まれた様々なパフォーマンスやアニメーションなどの動画、ワールドカップのイラン代表による「国家を歌わないこと」に見られた「沈黙すること」による抵抗など、様々な形の抗議の表現手段について考察したい。
●休憩 15:00-15:15
発表4:アブドゥルラフマン・ギュルベヤズ(長崎大学、言語学/記号論/社会学/音楽学)
「Jin Jiyan Azadî! 女性・生命・自由 クルド人女性の抵抗の響き」
”Jin Jîyan Azadî “というスローガンの歴史と政治的軌跡を、その1990年代半ばでの登場から、現在のイランでの応用まで、概略的に再構築する予定です。このスローガンの影響の歴史から直接生まれた曲を用いて、私の発言を展開する。この再構築に沿って、一方ではフェミニズムの現状について、他方では、その社会政治的エネルギーは革命的でもあり反革命的でもある言語記号の両義的な力について、考察したい。
●質疑応答 15:55-16:30
●休憩 16:30-16:45
2. 中東映画鑑賞 16:45‐18:15
『記憶への旅』ハーラ・ムハンマド監督、2006年、シリア、47分、アラビア語(英語字幕) https://www.menaprisonforum.org/AR/films_detail/199/
シリアの作家3人がパルミラに向かう車内で「絶対的な監獄」と呼ばれた同地刑務所での収監経験を振り返りながら、来るべき「祖国」のあり方について話し合う。
解説:岡崎弘樹(亜細亜大学、アラブ近現代政治思想)
●懇親会 19:00-
■1月8日(日) 10:00‐16:30
3. 特集:国歌とワタン 10:00-12:00
発表1 福田義昭(大阪大学、アラブ文学)
「アラブ諸国国歌とその周辺から見るワタンの姿」
音楽的にみると、国歌は「面白くない」とされるのが普通である。しかし、各国の文化・政治・社会などを考える切り口としては結構「面白い」。歌詞の内容だけでなく、歌としての歴史、国歌制定の経緯、受容と実践、替え歌を含む拡散や越境、それらをめぐる議論など、国歌の周囲にはいろいろな文脈がある。それらには各国の自己規定や他国との関係が印象的な形であらわれ、ワタンをめぐる当該国・社会の認識や人心の機微をより深く理解するための手がかりを見つけることもできる。こうした見方にもとづき、今回の発表では、国歌やその周辺現象をとりあげ、アラブ諸国のワタン観、ナショナル・アイデンティティ等をあらためて考えてみたい。
発表2 アブドゥルラフマン・ギュルベヤズ(長崎大学、言語学/記号論/社会学/音楽学)
「Ey Reqîb! / おい、敵よ 非典型的なキャリヤ」
クルドの国歌が誕生した経緯について紹介し、それが処刑者や拷問者に対する抵抗と反抗から直接生まれたという点を考察したい。
●ランチ休憩(60分)
4. ミニ発表 13:00‐14:00
佐藤愛 (英語翻訳者・通訳者、英語アラブ文学)
「聴く詩〈うた〉、見る詩――パレスチナ系詩人ジョージ・エイブラハムの世界を覗く」
パレスチナ系米国人のジョージ・エイブラハムは、ワタン(の喪失)や世代間トラウマ、精神疾患、クィア性などのテーマを織り交ぜた詩の数々を発表している。特に興味深いと思われる作品をいくつか紹介し、ジョージの作品世界を垣間見ていただければと思う。
●プロジェクトMTG(研究メンバー)14:00‐14:45
2022年度活動報告&今後の活動計画
5. Special Presentation 15:00‐16:30
Enass Khansa (American University of Beirut)
“ A Novel as a Series of Talks: al-Mis’adī’s ‘Abū Hurayra Narrated, He Said’”
Abstract:
In Abū Hurayra Narrated, He Said, Tunisian novelist Mahmoud al-Mis’adī (1911-2004) problematizes the ordinary notion of authorship — accepted by both Arab and Western critics at the time — through a powerful twin: the novel and the classical premodern ‘talks’ (ḥadīth, pl. aḥādīth or Ḥadīth). That the two coincide in the act of narration (riwāya, sard) is positioned as a critical incipit for a capacious attitude that at once traces in the Arabic classic tinge of the modern while admitting contemporary experimentations. From the onset al-Mis’adī claims, Arabic premodern multi-vocal and multi-layered styles of writing, anticipate the novel. Engaging with al-Mis’adī’s proposal, this talk explores the recrudescence of the Arabic classical repertoire as a site of imagining an Arab framework for modern thought.
Language: English
【共催】
中東現代文学研究会
科研基盤研究(A)「トランスナショナル時代の人間と「祖国」の関係性をめぐる人文学的、領域横断的研究」(代表:岡真理)