研究活動
日時:2021年3月17日(水)13:00-17:00(終了しました)
会場:京都大学 吉田南キャンパス 吉田南総合館 東南棟1階101演習室/オンライン(Zoom)
プログラム
趣旨説明 13:00‐13:30
岡 真理(京都大学)
「なぜ《ロマ》か Memory Monster の対極的地平から《ワタン》を考える」
報告1 13:30 – 15:00
阿部賢一(東京大学) 「わが祖国はいずこに チェコにおけるロマ作家の作品から」
「「シオンの悲嘆者」運動:中世ユダヤ教における「イスラエルの地」と「捕囚の地」を巡る力学」
中世ユダヤ教における多数派であったラビ・ユダヤ教は、捕囚の地(バビロン)に居住することを天命と受け止めていた。だが同時代にラビ・ユダヤ教の対抗勢力として台頭したカライ派は、捕囚の地への居留を批判し、イスラエルの地へと移住することを訴えた。なぜカライ派がイスラエルの地への帰還を呼びかけたのかを考察し、中世における一種のシオニズムともいえる、同派のシオンへの憧憬を展望する。
報告2 15:10‐16:40
岩谷彩子(京都大学) 「ロマにおける《Home》と帰属意識」
ロマにとって≪Home≫とはなにか―「移動する民」とみなされてきた彼らにとってのその問いは、これまで常に非ロマの視点から≪Homeland≫あるいは「起源(origin)」に置き換えられてきた。ロマのインド起源に始まり、それは彼らの「今、ここ」を「どこか」につなぎとめ、その「どこか」の地点から彼らの離散の歴史を物語る「俯瞰の語り」である。それは不確かな現在を過去と直線的に結びつけることで安定させ、不確定的な未来を手繰り寄せる営みともいえる。ところがそのような語りをロマはもたなかった。彼らが生活するうえで≪Homeland≫や起源の語りは現実的ではなかったのだ。彼らが目指してきたのは、流動的な生活環境の中で、その時々の≪Home≫を生成することであった。本報告では、ロマにとっての≪Home≫の立ち現れ方を、ルーマニアのロマが住まう家屋や集う祭を紹介しながら考察する。移動の中で発現する≪Home≫を検討することで、領土に収れんしないロマの帰属のあり方を提示してみたい。
【共催】
科研基盤研究(A)「トランスナショナル時代の人間と「祖国」の関係性をめぐる人文学的、領域横断的研究」(代表:岡真理)
科研基盤研究(B)「ディアスポラの記憶と想起の媒体に関する文化人類学的研究」(代表:岩谷彩子)
科研基盤研究(C)「ボヘミア文学史の記述に関する研究」(代表:阿部賢一)